「仕事の内容は嫌いではないのに、人間関係で疲れてしまう」
「急な予定変更があると、何から始めればよいか分からなくなる」
「仕事が長く続かず、自分に向いている働き方が分からない」
ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、このような悩みを抱えている方がいます。
しかし、仕事が続かなかったからといって、働く能力がないわけではありません。仕事内容や職場環境、指示の出され方が、自分の特性に合っていなかった可能性があります。
大切なのは、苦手なことを無理に克服することではなく、自分が安心して能力を発揮できる環境を見つけることです。
今回は、ASDの方におすすめの働き方や向いている可能性がある仕事、長く働き続けるための工夫について解説します。
ASDの方が仕事で感じやすい困りごと
ASDの特性や困りごとの現れ方には、大きな個人差があります。「ASDだから必ずこうなる」と一括りにすることはできません。
そのうえで、仕事では次のような場面に負担を感じることがあります。
- 曖昧な指示を理解することが難しい
- 職場の暗黙のルールが分かりにくい
- 急な予定変更に混乱してしまう
- 複数の仕事を同時に進めることが苦手
- 雑談や電話対応で疲れやすい
- 音や光、におい、人の動きが気になる
- 自分から質問や相談をすることが難しい
- 集中しすぎて疲労に気づきにくい
たとえば、「これを早めにやっておいて」と言われても、「早めとはいつまでなのか」「どの程度まで仕上げればよいのか」が分からず、不安になる場合があります。
一方で、ASDの方の中には、興味のある分野への高い集中力、細かな違いに気づく力、決められた手順を守る力、正確に作業を続ける力などを持っている方もいます。
職場環境や仕事内容が合えば、これらの特性は大きな強みになります。
ASDの方におすすめの働き方5選
1.仕事の手順やゴールが明確な働き方
ASDの方の中には、「適当にやっておいて」「状況を見て判断して」といった曖昧な指示に戸惑いやすい方がいます。
そのため、次のような条件が整っている仕事がおすすめです。
- 作業手順が決まっている
- マニュアルが用意されている
- 仕事の優先順位が明確になっている
- 完成の基準が分かりやすい
- 期限が具体的に示されている
口頭説明だけでなく、文章、写真、チェックリスト、チャットなどで指示を確認できると、より安心して作業を進められます。
指示を受けたときは、「いつまでに」「どこまで」「どの順番で行うか」を確認することが大切です。
2.一つの作業に集中できる働き方
電話を受けながらパソコンへ入力し、来客にも対応するなど、複数の仕事を同時に進める環境は負担になる場合があります。
作業の切り替えが苦手な方には、一つずつ完了させられる仕事が向いている可能性があります。
たとえば、次のような仕事です。
- データ入力
- 書類整理
- 商品の検品
- 梱包や仕分け
- 清掃
- 在庫管理
- 画像加工
- 商品登録
- ミシンやハンドメイド作業
ただし、職種だけを見て判断するのではなく、作業中にどの程度割り込みが入るのか、困ったときに相談できる相手がいるのかも確認しましょう。
3.刺激を調整できる環境で働く
感覚過敏がある方にとって、周囲の話し声、電話の音、蛍光灯の光、強いにおいなどが大きな負担になることがあります。
刺激を我慢し続けると、集中力が低下するだけでなく、帰宅後に動けなくなるほど疲れてしまう場合もあります。
そのため、次のような環境調整ができる職場がおすすめです。
- 人の出入りが少ない席で作業する
- 静かな場所で休憩する
- 照明の位置や明るさを調整する
- 許可を得て耳栓やイヤーマフを使用する
- 混雑する時間を避けて通勤する
- 在宅勤務を取り入れる
在宅勤務は刺激を減らしやすい一方で、質問するタイミングが分からない、孤立しやすいといった問題もあります。
チャットで相談できる担当者がいる、定期的な面談があるなど、在宅でも支援を受けられる仕組みが重要です。
4.勤務時間や日数を調整できる働き方
「働くなら週5日、1日8時間でなければならない」と考える必要はありません。
体調や疲れやすさに合わせて、週2日や短時間勤務から始める方法もあります。慣れてから少しずつ勤務時間を増やしていくことで、自分に合うペースを確認できます。
無理をして体調を崩し、長期間休むよりも、安定して続けられる働き方を選ぶことが大切です。
勤務時間を考えるときは、仕事中の様子だけでなく、次の点も確認しましょう。
- 帰宅後に家事や食事ができるか
- 翌日まで疲れが残っていないか
- 睡眠や食欲に変化がないか
- 休日だけで疲労が回復するか
- 遅刻や欠勤が増えていないか
仕事以外の生活が成り立たない場合は、勤務時間や仕事量が多すぎる可能性があります。
5.得意なことや興味を活かせる働き方
好きなことや興味のある分野に深く集中できることは、仕事上の強みになる場合があります。
パソコン、イラスト、動画編集、数字、機械、文章、手作業など、自分が比較的疲れにくく、続けやすい分野を探してみましょう。
ただし、「ASDの方にはIT関係が向いている」と決めつけることはできません。
パソコン作業が得意でも、頻繁な打ち合わせや急な仕様変更が負担になる方もいます。反対に、接客でも役割や会話の流れが明確であれば、安心して取り組める方もいます。
診断名から仕事を選ぶのではなく、自分自身の得意・苦手・希望から考えることが大切です。
ASDの方に向いている可能性がある仕事
ASDの方に向いている仕事は一人ひとり異なりますが、手順や役割が分かりやすく、集中しやすい仕事として、次のようなものがあります。
パソコンを使う仕事
- データ入力
- Webサイトの更新
- 商品登録
- 情報収集やリサーチ
- プログラミング
- システムテスト
- 画像加工
- 動画編集
パソコン作業では、作業内容や完成基準が画面上で確認できるため、取り組みやすい方もいます。
正確さを活かせる仕事
- 商品の検品
- 書類の確認
- 誤字脱字のチェック
- 在庫管理
- 経理補助
- 品質確認
細かな違いやミスに気づきやすい方は、正確さが求められる仕事で力を発揮できる可能性があります。
手順が決まっている作業
- 梱包
- 仕分け
- ピッキング
- 品出し
- 清掃
- 部品の組み立て
- ミシン作業
- ハンドメイド
同じ手順を繰り返す仕事は、見通しを持ちやすく、落ち着いて取り組める場合があります。
重要なのは、仕事の名前だけで決めないことです。同じ「データ入力」でも、静かな職場と電話が鳴り続ける職場では、働きやすさが大きく異なります。
可能であれば、応募前に職場見学や体験を利用しましょう。
ASDの方が仕事を長く続けるための工夫
自分の取扱説明書をつくる
自分の得意なこと、苦手なこと、疲れやすい状況、必要な配慮を整理しておくと、職場へ相談しやすくなります。
たとえば、次のように具体的にまとめます。
- 口頭指示だけでは忘れやすいため、メモでも確認したい
- 一度に複数ではなく、一つずつ指示してほしい
- 予定変更はできるだけ早く教えてほしい
- 静かな場所で休憩したい
- 困ったときの相談担当者を決めてほしい
苦手なことだけでなく、「手順が決まっていれば正確に作業できる」など、能力を発揮できる条件も伝えましょう。
疲労のサインを記録する
仕事中は集中できていても、帰宅後に強い疲れが出ることがあります。
睡眠、食欲、頭痛、イライラ、欠勤、帰宅後の状態などを簡単に記録すると、疲れがたまる前に気づきやすくなります。
調子を崩してから休むのではなく、崩れる前に休憩や仕事量を調整することが、長く働くためには重要です。
相談する相手を決めておく
「誰に質問すればよいか分からない」という状況は、大きなストレスになります。
仕事の指示を出す人や相談担当者を決めてもらい、定期的に振り返る時間をつくると安心です。
自分から声をかけることが難しい場合は、「毎日15時に進捗を確認する」など、相談する時間を決めておく方法もあります。
ASDの方が利用できる就労支援
ASDの方の働き方には、一般就労だけでなく、障害者雇用や就労支援サービスという選択肢があります。
一般就労
職種や求人の選択肢が広い働き方です。
障害を開示せずに働くこともできますが、職場から配慮を受けるためには、自分の困りごとや必要な対応を相談する必要があります。
障害者雇用
障害や特性を職場へ伝えたうえで働く方法です。
勤務時間、業務内容、指示方法、通院などについて相談しやすいことが特徴です。どのような配慮を受けられるかは、職場によって異なります。
就労移行支援
一般企業への就職を目指す方が、働くための準備や訓練、就職活動の支援を受けられる障害福祉サービスです。
生活リズムを整えたい方や、自分に向いている仕事を整理したい方にも活用されています。
就労継続支援A型
一般企業で働くことは難しくても、雇用契約に基づいて継続的に働ける方を対象としたサービスです。
事業所と雇用契約を結ぶため、最低賃金が適用されます。
就労継続支援B型
現時点で一般企業や雇用契約に基づく就労が難しい方に、作業や生産活動の機会を提供する障害福祉サービスです。
事業所との雇用契約は結ばず、作業による収益などに応じて工賃が支払われます。
体調や特性に合わせて、通所する日数や作業時間を相談しやすいことが特徴です。
利用条件や必要な手続きは一人ひとり異なるため、市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所へ確認しましょう。
自分に合う働き方を探せる「毎日が夏休み。」
就労継続支援B型事業所「毎日が夏休み。」では、利用者さん一人ひとりの得意なこと、苦手なこと、体調、希望を確認しながら、無理のない働き方を一緒に考えています。
作業内容は、パソコン作業、EC物販に関する作業、軽作業、梱包・検品、ミシン、ハンドメイドなどさまざまです。
「人が多い場所では疲れてしまう」
「毎日同じ時間に通うことが不安」
「まずは短い時間から始めたい」
「自分に向いている作業を見つけたい」
このような方も、最初から完璧にできる必要はありません。
実際に作業を体験しながら、安心して続けられる時間や環境を一緒に探していきます。
見学や体験では、作業内容だけでなく、室内の音や雰囲気、利用者さんの様子、支援員への相談のしやすさなども確認できます。
まとめ|自分に合う環境を選ぶことも働く力
ASDの方におすすめなのは、手順や役割が明確で、周囲の刺激を調整でき、自分の得意なことを活かせる働き方です。
仕事が続かなかった経験があっても、「自分は働くことに向いていない」と決めつける必要はありません。
仕事内容、勤務時間、指示方法、作業環境、相談体制を変えることで、安心して能力を発揮できる可能性があります。
週5日、1日8時間だけが働き方ではありません。短時間勤務、障害者雇用、在宅勤務、就労移行支援、就労継続支援など、選択肢は複数あります。
大切なのは、世間の基準に無理に自分を合わせることではなく、自分が安定して続けられる方法を見つけることです。
就労継続支援B型事業所「毎日が夏休み。」では、見学や体験のご相談を受け付けています。
「自分に合う仕事が分からない」という方も、まずは現在の悩みや希望をお聞かせください。一緒に、自分らしく働ける方法を探していきましょう。
よくある質問
ASDの方はどのような仕事に向いていますか?
手順や完成基準が明確で、一つの作業に集中しやすい仕事が合う場合があります。ただし、個人差が大きいため、職種名だけで判断せず、本人の得意分野や感覚特性、職場環境との相性を確認することが大切です。
ASDで仕事が続かないのは甘えですか?
甘えとは限りません。曖昧な指示、感覚への刺激、急な予定変更、対人関係などが大きな負担になっている可能性があります。困りごとを整理し、業務内容や勤務時間、環境を調整することで、仕事を続けやすくなる場合があります。
ASDでも就労継続支援B型を利用できますか?
ASDの診断があるだけで自動的に利用できるわけではありませんが、利用条件を満たし、市区町村から障害福祉サービスの支給決定を受けた場合は利用できます。詳しくは、市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所へ相談してください。

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