就労支援B型事業所「毎日が夏休み。」を運営しています。
「仕事に集中できない」「忘れ物やミスが多い」「職場の人間関係で疲れてしまう」
ADHD(注意欠如・多動症)のある方の中には、このような悩みから働くことに自信をなくしている方もいるのではないでしょうか。
しかし、ADHDの特性があるからといって、働くことができないわけではありません。自分の特性を理解し、仕事内容や職場環境を選び、必要な工夫や支援を取り入れることで、安心して働き続けられる可能性があります。
この記事では、ADHDの方が仕事で感じやすい困りごとや、自分に合った仕事を見つける方法、就労継続支援B型を利用するメリットについて解説します。
ADHDの方が仕事で困りやすいこと
ADHDの特性の現れ方には個人差があります。すべての方に同じ特徴があるわけではありませんが、仕事では次のような困りごとが起こることがあります。
集中力を維持することが難しい
周囲の話し声や物音、人の動きなどが気になり、目の前の作業に集中できないことがあります。
単調な仕事を長時間続けることが苦手な一方で、興味のある作業には時間を忘れるほど集中する「過集中」が起こる方もいます。
集中できないのは本人の努力不足ではありません。作業時間を短く区切る、静かな席を選ぶ、適度に休憩を取るなどの環境調整が大切です。
忘れ物や確認漏れが起こりやすい
複数の指示を一度に受けると、一部を忘れてしまうことがあります。また、持ち物、提出期限、作業手順などを覚えておくことに負担を感じる方もいます。
口頭だけで指示を受けるのではなく、メモやチェックリストを活用すると確認漏れを減らせます。
時間や予定の管理が苦手
作業に必要な時間を予測できず、予定よりも時間がかかることがあります。反対に、急いで終わらせようとしてミスが増える場合もあります。
時計やタイマーを使い、「何時までに何をするか」を目に見える形にすると取り組みやすくなります。
思いついたことをすぐに行動へ移してしまう
相手の話が終わる前に発言したり、確認する前に作業を進めたりすることがあります。その結果、職場で誤解を受ける場合があります。
行動する前に「一度確認する」「10秒待つ」など、自分なりのルールを決めることが有効です。
人間関係で疲れやすい
注意された内容を必要以上に重く受け止めたり、相手の表情や言葉が気になったりする方もいます。
過去の失敗経験が積み重なっていると、「また怒られるかもしれない」という不安から、質問や相談ができなくなることもあります。
安心して働くためには、困ったときに相談できる支援者や職員がいる環境が重要です。
ADHDの方が安心して働くための7つの方法
1.自分の得意と苦手を整理する
まずは、自分の特性を具体的に整理してみましょう。
「集中力がない」と考えるだけでは、対策を立てることが難しくなります。
例えば、次のように整理します。
- 静かな場所なら集中しやすい
- 口頭の指示よりも文章や写真の方が分かりやすい
- 30分ごとに休憩すると作業を続けやすい
- 同じ作業だけでなく、複数の作業がある方が集中できる
- 急な予定変更があると混乱しやすい
苦手なことだけでなく、得意なことも確認しましょう。ADHDの方の中には、行動力、発想力、好奇心、決断の速さ、興味のある分野への高い集中力などを仕事に生かしている方もいます。
2.指示を見える形にしてもらう
仕事の指示は、口頭だけではなく、文字や写真で示してもらうと理解しやすくなります。
作業手順書やチェックリストがあれば、自分で確認しながら進められます。分からないことを何度も聞く不安も軽減できるでしょう。
指示を受けたときは、「最初にこれを行い、終わったら次の作業に移るという理解で合っていますか」と確認することも大切です。
3.作業を小さく分ける
大きな仕事を一度に終わらせようとすると、何から始めればよいか分からなくなることがあります。
その場合は、作業を小さな単位に分けます。
例えば、商品の出品作業であれば、次のように分けられます。
- 商品を確認する
- 写真を撮影する
- 商品情報を入力する
- 価格を設定する
- 入力内容を確認する
- 出品する
一つずつ終わらせることで進捗が分かりやすくなり、達成感も得られます。
4.タイマーや予定表を活用する
時間管理が苦手な場合は、頭の中だけで予定を管理しないことがポイントです。
スマートフォンのアラーム、タイマー、カレンダー、付箋などを使い、予定を目で確認できるようにします。
「25分作業して5分休憩する」など、短い時間で区切る方法もあります。ただし、自分に合う時間は人によって異なるため、無理なく集中できる長さを探しましょう。
5.集中しやすい環境を整える
周囲の音や人の動きが気になる場合は、席の位置を変えるだけでも集中しやすくなることがあります。
職場に相談しながら、次のような工夫を検討してみましょう。
- 人の出入りが少ない席で作業する
- 机の上に必要な物だけを置く
- 一度に担当する仕事を減らす
- 集中が切れる前に休憩する
- 作業内容を途中で切り替える
- イヤーマフなどの使用を相談する
本人だけが努力するのではなく、環境を調整することも立派な働き方の工夫です。
6.早めに相談する
ミスをしてから相談するのではなく、「分からない」「間に合わないかもしれない」と感じた段階で相談することが大切です。
相談しやすい職場では、一人で問題を抱え込まずに済みます。
最初から上手に説明できなくても問題ありません。「少し困っています」「一緒に確認してほしいです」と伝えることから始めてみましょう。
7.自分に合った働き方を選ぶ
週5日、1日8時間働くことだけが働き方ではありません。
体調や特性に応じて、短時間勤務、週2~3日の勤務、在宅作業、障害者雇用、就労移行支援、就労継続支援A型・B型などを選択できます。
最初は短い時間から始め、慣れてきたら日数や作業時間を増やす方法もあります。
大切なのは、周囲と同じ働き方をすることではなく、自分が無理なく続けられる働き方を見つけることです。
ADHDの方に向いている仕事とは
ADHDの方に向いている仕事を一つに決めることはできません。同じ診断名でも、得意なこと、苦手なこと、興味、体調はそれぞれ異なるからです。
仕事を選ぶときは職種名だけではなく、次の点を確認しましょう。
- 作業手順が分かりやすいか
- 仕事の優先順位が明確か
- 自分のペースで取り組めるか
- 適度に作業内容を変更できるか
- 困ったときに質問できるか
- ミスを防ぐ仕組みがあるか
- 休憩や勤務時間を調整できるか
パソコン作業、データ入力、画像加工、ECサイトへの商品登録、軽作業、ハンドメイドなども選択肢になります。
ただし、「ADHDだからこの仕事が向いている」と決めつける必要はありません。実際に体験し、自分が取り組みやすい作業を確認することが大切です。
就労継続支援B型という選択肢
一般企業で働くことに不安がある場合は、就労継続支援B型を利用する方法があります。
就労継続支援B型は、障害や病気などにより一般企業で働くことが難しい方に、働く機会や必要な支援を提供する福祉サービスです。雇用契約を結ばず、体調や特性に合わせて作業へ取り組めることが特徴です。
事業所によって異なりますが、次のような支援を受けられます。
- 短い時間や少ない日数から通所する
- 体調に合わせて作業量を調整する
- 得意な作業を探す
- 職員と一緒に作業手順を確認する
- 生活リズムを整える
- 人との関わりに少しずつ慣れる
- 将来の就労について相談する
すぐに一般就労を目指す必要はありません。まずは決まった日に通う、一定時間作業する、分からないことを質問するといった小さな経験を積み重ねることが、自信につながります。
B型事業所を選ぶときのポイント
ADHDの方が安心して利用するためには、事業所との相性が重要です。
見学や体験利用では、次の点を確認しましょう。
- ADHDや発達障害への理解があるか
- 作業手順が分かりやすく示されているか
- 静かに作業できる場所があるか
- 休憩や作業変更を相談できるか
- 職員へ質問しやすい雰囲気があるか
- 興味を持てる作業が用意されているか
- 利用日数や時間を調整できるか
ホームページの情報だけで判断せず、実際の雰囲気を確認することをおすすめします。体験した結果、「何となく落ち着かない」と感じた場合も大切な判断材料です。
失敗の少なさより、安心して挑戦できる環境を
ADHDの方が安心して働くために必要なのは、失敗を完全になくすことではありません。
誰にでもミスや調子の悪い日はあります。大切なのは、失敗したときに責められるだけではなく、原因を一緒に考え、次の工夫につなげられる環境です。
「できないこと」を無理に克服し続けるより、道具や仕組み、人の支援を利用した方が安定して働けることもあります。
就労継続支援B型事業所「毎日が夏休み。」では、一人ひとりの体調や得意・不得意を確認しながら、無理のない働き方を一緒に考えています。
パソコン作業、EC関連作業、軽作業、ハンドメイドなどを通して、自分に合う仕事を探すことができます。
「仕事が続かなかった」「働くことが怖い」「自分にできる仕事が分からない」という方も、最初から完璧に働く必要はありません。
まずは見学や相談から、自分に合った一歩を探してみてください。
まとめ
ADHDの方が安心して働くためには、自分の特性を理解し、仕事内容や職場環境を調整することが大切です。
チェックリストやタイマーの活用、作業の細分化、早めの相談などによって、仕事上の負担を減らせる可能性があります。
一般就労に不安がある場合は、就労継続支援B型を利用し、短時間の作業から経験を重ねることも一つの方法です。
自分に合わない環境で頑張り続けることだけが努力ではありません。自分が力を発揮しやすい場所を探し、必要な支援を利用することも、安心して働き続けるための大切な選択です。

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