はじめに 同じ「働く」でも仕組みはまったく違う
「障がいがあっても働きたい」
「一般企業で働くのは不安だから、まずは支援を受けたい」
このように、障がいのある方が“働く”ときには大きく分けて2つの選択肢があります。
それが「障がい者雇用」と「就労支援事業所」です。
どちらも「働く」ことを支える制度ですが、仕組み・目的・働き方・支援体制が大きく異なります。
この記事では、その違いをわかりやすく整理しながら、あなたに合った働き方を見つけるヒントをお伝えします。
第1章 そもそも「障がい者雇用」とは?
障がい者雇用の目的
「障がい者雇用」とは、障がいのある方が一般企業などに労働者として雇用される制度です。
企業は「障害者雇用促進法」に基づき、一定の割合で障がい者を雇うことが義務づけられています。
▶ 障がい者雇用率制度
- 民間企業:従業員の2.5%以上(2024年時点)
- 国・自治体:2.6%以上
- 教育機関:2.5%以上
つまり、100人の従業員がいる会社では、2〜3人程度の障がい者を雇用しなければならない仕組みです。
雇用契約と給与
障がい者雇用は、一般の労働契約と同じく雇用契約を結び、最低賃金以上の給与が支払われるのが特徴です。
勤務時間・休暇・福利厚生なども、基本的には一般社員と同じです。
障がい者雇用の働き方
- 一般企業での事務・清掃・製造・接客など
- 特例子会社(障がい者雇用を専門に行う子会社)での勤務
- 在宅勤務など柔軟な働き方も増加中
企業は、業務の調整や職場の環境改善などを行いながら、長期的な就労を支援します。
第2章 就労継続支援B型とは?「働く練習」の場
B型事業所の位置づけ
一方、「就労継続支援B型」は、障がい福祉サービスに分類される支援制度です。
「一般企業で働くのはまだ難しい」という方が、自分のペースで働く練習をする場所です。
B型の特徴
- 雇用契約を結ばない(利用契約)
- 自分の体調やペースに合わせて通所できる
- 作業に応じて「工賃(報酬)」が支払われる
- 働きながら生活リズムを整えることができる
B型は、“福祉サービス+働く体験”という形で、支援員や職員がサポートしながら、利用者の成長を支えます。
第3章 障がい者雇用とB型事業所の違いを一覧で比較
| 項目 | 障がい者雇用 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 契約の種類 | 雇用契約(労働者) | 利用契約(福祉サービス利用者) |
| 給与・報酬 | 最低賃金以上の給与 | 工賃(成果報酬、平均1万〜3万円) |
| 働く場所 | 一般企業・特例子会社 | 福祉事業所 |
| 勤務時間 | 週30時間程度が多い | 1日2〜5時間が中心 |
| 雇用保険・年金 | 加入あり | 加入なし(福祉サービス扱い) |
| サポート体制 | 企業内での配慮 | 支援員が日常的にサポート |
| 目的 | 長期的な就労・キャリア形成 | 社会参加・生活リズムの安定 |
| 利用期間 | 制限なし(契約更新制) | 制限なし(体調に合わせて継続可) |
このように、「障がい者雇用」は“仕事としての責任と給与”を重視する一方、
「就労支援B型」は“安心して働く練習を積む”ことを重視しています。
第4章 どんな人に向いている?適性の違い
障がい者雇用に向いている人
- 安定して働く体力・集中力がある
- ある程度の通勤・出勤が可能
- 指示に従いながら業務を遂行できる
- 社会的スキルをある程度身につけている
このような方は、一般企業での障がい者雇用を目指すと良いでしょう。
特例子会社などでは、障がい特性に配慮した環境で働くことも可能です。
就労支援B型に向いている人
- まずは生活リズムを整えたい
- 体調に波があり、フルタイム勤務が難しい
- 社会経験を積む段階にいる
- 人との関わりを少しずつ広げたい
B型は、「焦らず一歩ずつ」が合言葉。
自分のペースで少しずつ“働く自信”を取り戻すことができます。
第5章 B型から障がい者雇用へ──ステップアップの流れ
B型で経験を積むことで、「もう少し働いてみよう」と感じる方も多くいます。
そこからA型事業所や障がい者雇用へとステップアップすることができます。
ステップアップの例
- B型で働く習慣を身につける
→ 通所・時間管理・作業の継続ができるようになる - A型事業所や実習に挑戦
→ 雇用契約を結び、最低賃金の給与を得る - 障がい者雇用として一般企業へ
→ 福祉から職業世界へ移行
このように、B型は“社会に出る準備段階”として重要な役割を果たしています。
第6章 障がい者雇用の課題と現状
① 定着率の低さ
障がい者雇用は年々拡大していますが、離職率が高いのも現実です。
特に就職後1年以内の離職が約40%を超えるといわれています。
理由としては、体調の変化、職場理解不足、人間関係のストレスなどが挙げられます。
② 職種の偏り
清掃・軽作業・事務補助などに職種が偏る傾向もあり、本人のスキルを十分に活かせない場合があります。
そのため、企業側にも「多様な働き方・配置」の工夫が求められています。
③ サポート体制の不足
職場内の支援担当者やジョブコーチの配置が十分でない企業もあり、働き続けるためのサポートが課題です。
第7章 B型事業所が果たす社会的役割
就労支援B型は、単なる「作業の場」ではありません。
そこには、障がい者の“生きがい”と“社会参加”を支える大きな役割があります。
① 働く喜びを感じる場所
成果が工賃として形になることで、
「自分も社会の一員として貢献している」という実感が得られます。
② 安心できるコミュニティ
支援員や仲間との交流を通じて、孤立を防ぎ、心の安定を保ちます。
「毎日が夏休み。」のような事業所では、笑顔で通える温かい空間づくりを大切にしています。
③ ステップアップの土台づくり
B型での経験は、将来の就職にも直結します。
作業スキル・協調性・勤怠管理など、社会で必要な基礎力を育てる場所です。
第8章 「毎日が夏休み。」が目指す働き方支援
私たち就労継続支援B型事業所「毎日が夏休み。」では、次の理念のもと、
利用者が“自分らしい働き方”を見つけられるよう支援しています。
- 理念: 人のために生きる
- 使命: 自分らしく、誠実な人の創造
- 価値観: 利他・自責・勇気・挑戦
「毎日が夏休み。」の取り組み
- 無理のない短時間作業(10:00〜15:00)
- 昼食無料・送迎あり
- 平均工賃3万円を目指した生産活動
- 一人ひとりの個性を尊重した作業内容
「働くことが不安」な方も、ここから再スタートできます。
一歩を踏み出す勇気が、次の未来を変えていきます。
第9章 あなたに合った“働く形”を選ぶことが大切
障がい者雇用と就労支援B型は、どちらも「働く」を支える仕組みですが、目的が異なります。
- 障がい者雇用: 仕事として働き、給与を得る
- 就労支援B型: 働く練習を通して、自信と生活の安定を得る
どちらが良い・悪いではなく、“今のあなたに合っているかどうか”が大切です。
もし「まだ自信がない」と感じるなら、まずはB型事業所で少しずつ慣れていくのがおすすめです。
「毎日が夏休み。」は、あなたのペースに合わせて“働く喜び”を一緒に育てていく場所です。
焦らず、比べず、あなたらしい一歩を踏み出しましょう。

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