はじめに:てんかんは誰にでも起こりうる“脳の病気”
「てんかん」という言葉を聞くと、
「急に倒れてしまう病気?」「怖い発作?」というイメージを持つ方もいます。
しかし、てんかんは決して珍しい病気ではありません。
日本では約100万人(100人に1人)がてんかんを持っていると言われており、子どもから高齢者までどの年齢でも発症する可能性があります。
この記事では、
- てんかん発作とは何か?
- 症状にはどんな種類があるのか?
- 原因は何か?
- 正しい対処や周囲の支援は?
を、医療知識のない方でも理解できるよう、やさしく解説します。
障がい福祉や就労支援B型事業所を利用されている方やご家族にも役立つ内容です。
1. てんかん発作とは?
■ てんかん発作=「脳の電気信号の誤作動」
脳の神経細胞は電気信号を使って情報をやり取りしています。
この電気信号が突然乱れ、異常に強い電気活動が一時的に起こると「てんかん発作」が起きます。
イメージとしては、
脳に“電気のショート”が起きた状態
と考えると分かりやすいです。
■ 発作は1回でも起きる?
→ てんかんは「繰り返し起こる」特徴がある病気
1回だけの発作を「てんかん」とは診断せず、
2回以上発作が起きる、または再発の可能性が高い場合に“てんかん”と診断されます。
2. てんかんの主な症状
てんかんというと「倒れてけいれん」というイメージが強いですが、発作はそれだけではありません。
症状は多様で、以下のように分類できます。
● けいれんを伴う発作
- 全身がガクガク震える
- 意識を失って倒れる
- 呼吸が止まったように見えることもある
● 意識がぼんやりする発作
- 会話が止まる
- 返事がない
- 目がうつろ
- 数十秒で回復することが多い
● 幻覚・感覚異常
- 変な匂いがする
- 怖い感覚が急に湧き上がる
- デジャブ(見たことがある感覚)が起きる
● 自動症(無意識の行動)
- 口をモグモグさせる
- 手を動かす
- 歩き出す
本人に記憶が残らないこともあります。
3. てんかんの原因
てんかんの原因は一つではありません。
大きく以下のように分けられます。
◆① 構造的な原因(脳の障害)
- 脳梗塞・脳出血後
- 外傷性脳損傷(交通事故など)
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 高次脳機能障害
→ 大人のてんかんで最も多い原因
◆② 遺伝的要因
遺伝そのものではなく、「発作が起きやすい体質」が家系にある場合があります。
◆③ 原因不明(特発性)
検査しても脳に異常が見つからないケース。
比較的若い人の発症に多いタイプ。
◆④ その他
- アルコールの大量摂取・禁断症状
- 強いストレス
- 高熱
などが引き金になることもあります。
4. てんかん発作の種類(国際分類に基づく)
世界的に使用されている国際分類(ILAE分類)では、発作は大きく2種類に分類されます。
【1】焦点発作(部分発作)
脳の一部分で電気の異常が起きる発作。
● 焦点意識保持発作
意識がある状態で発作が起きる
例:手が震える、体の一部がビクッとなる、変な匂いがする
● 焦点意識障害発作
意識がぼんやりし、会話や行動が止まる
→「ぼーっとする」「返事がない」「自動症が出る」
● 焦点発作から全般へ進展
部分的に始まった発作が全身に広がるタイプ。
【2】全般発作(脳全体が関係する発作)
脳全体の電気活動が乱れるタイプ。
● 強直間代発作(大発作)
最もイメージされやすいタイプ
- 意識を失う
- 全身が硬直(強直)→ガクガク(間代)
- 数分で収まり、深い眠りに入ることも多い
● 欠神発作(小発作)
特に子どもに多い
- 数秒間ぼーっとする
- その後すぐに作業に戻る
本人は気付かないこともある
● ミオクロニー発作
体の一部がビクっと跳ねるように動く
朝起きたときに多いタイプ
5. てんかんの診断方法
てんかんは脳波検査(EEG)が中心です。
発作の種類によって脳波のパターンが異なり、診断の決め手になります。
その他にも、
- MRI
- CT
- 血液検査
- 問診(発作の様子の聞き取り)
などを組み合わせて診断します。
6. てんかんの治療法
【1】薬物治療(抗てんかん薬)
最も一般的な治療で、約70%の方が薬で発作をコントロールできます。
● 薬のポイント
- 毎日決まった時間に飲む
- 自己判断でやめない
- 副作用は医師に相談
- 量や種類は調整されることが多い
発作が落ち着けば、数年後に薬を減らすこともあります。
【2】手術治療
薬が効きにくい場合に検討されます。
- てんかんの原因となる脳の部分を取り除く
- 電気刺激で発作を抑える装置を埋め込む(VNS)
【3】生活面の工夫
- 睡眠不足を避ける
- アルコールを控える
- 強いストレスを溜めない
- 規則正しい生活を送る
発作を誘発しやすい要因を避けることも大切です。
7. 発作が起きたときの正しい対処方法
⚠ 絶対にしてはいけないこと
- 口に物を入れる(危険)
- 体を強く押さえつける
- 無理に立たせようとする
✔ 正しい対応
● ① 安全確保
周囲の物をどかし、頭をぶつけないようにする
● ② 呼吸を妨げない体勢にする
回復体位(横向き)にすると安心
● ③ 発作時間を計る
5分以上続くと「てんかん重積状態」で救急要請が必要
● ④ 意識が戻るまで見守る
優しく声をかける
無理に起こさない
✔ 救急車を呼ぶべき場合
- 発作が5分以上続く
- ケガを伴う
- 水場や道路など危険な場所で発作が起きた
- 連続して発作が起きている
- 初めての発作
8. てんかんのある方と「働く・生活する」ための支援
てんかんがあっても働くことは十分可能です。
実際、職場・教育機関・福祉サービスでは多くの方が活躍しています。
◆ 就労支援B型でのサポート
てんかんのある方は、B型事業所で以下の安心を得られます。
- 発作に理解のあるスタッフ
- 体調に合わせた短時間作業
- 生活リズムの安定
- 医療機関との連携
- 作業中の見守り
「毎日が夏休み。」でも、てんかんを持つ利用者の方が安心して過ごせるよう、
作業前後の体調確認、無理のない作業量、送迎中の安全管理などを徹底しています。
9. まとめ:てんかんは適切な理解と支援があれば恐れなくていい病気
この記事で解説したように、てんかん発作は「脳の電気信号の誤作動」であり、
正しい理解と治療で多くの方が安定した生活を送っています。
✔ てんかん発作は種類が多い
✔ 原因は脳の疾患・体質・ストレスなど様々
✔ 薬による治療が中心で、高い効果がある
✔ 発作への正しい対処が重要
✔ 支援があれば働くことも十分可能
てんかんは“怖い病気”ではなく、
知ることで支えられる病気です。
もし身近にてんかんを持つ方がいたら、正しい知識で寄り添ってください。
そして、働くことに不安がある方は、就労支援B型を活用しながら“自分らしい生活”を取り戻すこともできます。

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